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No. 3(被引用数:73)

 

Abstract

To reduce the impact of disasters, healthcare providers, especially nurses, need to be prepared to respond immediately. However, nurses face several challenges in all phases of disaster management. The findings of a literature review based on scoping approaches, which utilized the Joanna Briggs Institute methodology, indicated that the major barriers facing nurses include the following: (1) disaster nursing is a new specialty; (2) inadequate level of preparedness; (3) poor formal education; (4) lack of research; (5) ethical and legal issues; and (6) issues related to nurses’ roles in disasters. Educators, researchers, and stakeholders need to make efforts to tackle these issues and improve disaster nursing.

Keywords: disaster nursing, disaster preparedness, disaster response, challenges

抄録

災害の影響を軽減するために,医療従事者,特に看護師は即時に対応できるよう備えておく必要がある。しかし,看護師は災害管理のあらゆる段階でいくつかの課題に直面している。ジョアンナ・ブリッグス研究所の方法論を利用したスコーピング・アプローチに基づく文献レビューの結果は,看護師が直面する主な障壁には次のようなものがあることを示した。(1) 災害看護は新しい専門分野である。(2) 準備レベルが不十分である。(3) 不十分な正規教育。(4) 研究不足。(5) 倫理的および法的問題。(6)災害時における看護師の役割に関する問題。教育者,研究者,関係者は,これらの問題に取り組み,災害看護を改善するために努力する必要がある。

キーワード:災害看護,災害対策,災害対応,課題

コメント

本研究は災害マネジメントにおいて看護における課題(challenges)に焦点をあてたスコーピングレビューである。本研究によって読者は,災害看護全般の課題と改善への糸口について知ることができる。 データベースによって最初に検索された700件より最終的には10件の論文についてレビューされている。そこから示された主な6課題は抄録にしめされた通りであるが,それについて著者は次のような提案を行っている。(1)災害看護教育と,職場における公式および継続的な教育・訓練のためのカリキュラムを開発する。意思決定者や指導者は,あらゆる種類の災害に対して,看護師がより自信と能力をもって効果的に対応できるよう,看護師の知識と技術を高める教育活動を確保することが強く推奨される。(2)災害対応に関わるシステムの不備や組織間の連携不足による混乱がなく,看護師が医療システムの中で効果的に働けるよう,病院前のシステムを改善する。(3)すべての医療従事者がチームとして対応し,相互理解を深めるために,病院内の災害計画を改善する。この分野を改善するためには,看護師を含むすべての関係者が災害計画の作成に参加することが推奨される。また,計画においては,リスクアセスメントのニーズと脆弱性に基づくべきである。(4)看護師が倫理的問題を含む葛藤を抱えることがないよう,倫理的・法的事項に関するガイドラインを作成し,災害管理における看護師の範囲と役割について概説することで,看護師の混乱を減らす努力も必要である。これらに加えて,著者は,災害時のエビデンスに基づく実践を支える質の高い災害看護の研究の必要性を提示している。
   特に,災害時,看護師にとって,倫理的・法的課題は重要である。著者は,災害時は,資源の配分,プライバシーと守秘義務の欠如,適切なトリアージ,治療の優先順位,自律的な作業,インフォームド・コンセント,文書化,同僚との衝突などが発生すると指摘している。災害対応中に患者が大量に押し寄せ,資源が限られている場合,看護師は倫理的な課題に直面する可能性がある。著者は,看護師を含む医療提供者のパフォーマンス目標には,緊急事態や災害に関する倫理原則をあげられること,災害対応中の資源配分のアプローチに精通していること,倫理的ジレンマに対処できることなどを述べている。そして,学部および修士課程レベルの災害教育の優先事項に倫理的問題を含めることや,倫理的・法的問題に関する看護スタッフの継続教育を推奨している。災害看護における倫理原則としては,「自律性の尊重」「無危害」「善行」「公正」があげられる。被災地支援に派遣された看護師には,「平常時とは異なる看護実践への葛藤」「平常時なら可能な治療やケアの提供不能」「プライバシーの尊重が困難」「感染予防対策の実施困難」「資源配分・物資配布方法の未整備」「被災地における格差」「派遣元の求めに応じることの苦しさ」「派遣元の方針が不透明」などの倫理課題を感じたことが報告されている(野口ほか, 2017)。支援ナースへの派遣前の準備として,被災地の環境や現地での支援の特徴,他支援者との連携等に関する研修や活動終了後のフォローアップが大切でる。
野口恭子ほか (2017):東日本大震災被災地へ支援のために 派遣された看護師が感じた倫理課題. 日本看護倫理学会誌, 9(1), 38-44.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjne/9/1/9_38/_pdf/-char/ja