A+ A A-
  • カテゴリ: top20
  • 参照数: 45

No. 10(被引用数:58)

Abstract

While the frequency and intensity of floods and droughts have dramatically increased over the past century, there is limited epidemiological evidence on the health impacts of these disasters. The paper examines the global trends and main health impacts of these events based on databases and case studies, identifies gaps in the Sustainable Development Goals (SDGs) indicator framework for monitoring health impacts of disasters and suggests recommendations to address these gaps. Natural disaster data and 38 case studies published from 2008 to 2018 were reviewed, and measures of association (Risk Ratio, Odds Ratio, and Incidence Rate Ratio) were extracted from the case studies for quantitative analysis. The findings of the review indicate that the SDGs lack of multifactorial disease and mental health risk factors, as well as water-borne disease indicators, misses critical health-associated impacts of floods and droughts. In particular, the narrow focus on suicide as an indicator of mental health overlooks how anxiety disorders or post-traumatic stress disorder (PTSD) can also have severe consequences for those affected by disasters. Health must be included in resilience-building initiatives at the individual, community, and national levels. The findings of the study suggest that further implementation research of the Sendai Framework and disaster risk reduction (DRR) efforts can contribute to the development of the broadly framed concept of health resilience to meet the needs of people at risk in disasters. Keywords: Floods; Droughts; Disaster risk reduction (DRR); Health impacts; Health resilience; Sendai framework; Sustainable development goals (SDGs)

抄録

過去 1 世紀の間に洪水や干ばつの頻度と激しさは劇的に増加したが,これらの災害による健康への影響に関する疫学的エビデンスは限られている。この論文は,データベースと事例研究に基づいて,これらの出来事による世界的な傾向と主な健康への影響を調査し,災害による健康への影響を監視するための持続可能な開発目標(SDGs)指標の枠組みにおけるギャップを特定し,これらのギャップに対処するための推奨事項を提案している。2008年から2018年までに公​​表された自然災害データと38件の事例研究をレビューし,事例研究から関連性の尺度(リスク比,オッズ比,発生率比)を抽出して定量分析した。レビューの結果は,SDGsには多因子疾患とメンタルヘルスの危険因子が欠如しており,また水系疾患の指標も欠如しているため,洪水や干ばつによる健康に関連する重要な影響が見逃されていることが示された。特に,精神的健康の指標として自殺に焦点が絞られているため,不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)が災害の影響を受ける人々にどのように深刻な結果をもたらす可能性があるかが見落とされていた。個人,地域社会,国家レベルでのレジリエンス構築の取り組みに健康を含める必要がある。研究結果は,仙台枠組の更なる実施研究と災害リスク軽減(DRR)の取り組みが,災害時に危険にさらされている人々のニーズを満たすための広範な健康回復力の概念の発展に貢献できることを示唆している。 キーワード: 洪水; 干ばつ; 防災(DRR); 健康への影響; 健康回復力; 仙台フレームワーク; 持続可能な開発目標(SDGs)

コメント

 この研究では,洪水や干ばつの世界的な傾向と,それらが人間の健康に及ぼす影響を調査するために,関連する国の災害データの分析と文献レビューが行われた。使われたデータは,EM-DAT(2019)のEmergency Events Database(https://www.emdat.be/emdat_db/),Open SDG Data Hubから関連するSDGs指標データ,主にScopus,Google Scholarデータベースからの文献レビュー(38件の文献)である。洪水の発生は1993年から2006年にかけて徐々に増加しているが,干ばつの出現は大きな変化はみられなかった。1993年から2018年にかけて,合計27億人が洪水の,16億人が干ばつの被害を受けた。洪水の多くはアジアで発生している。 短期的な健康被害としては,1.水系疾患:胃腸疾患(下痢など),呼吸器疾患,皮膚疾患(皮膚炎など),眼疾患(結膜炎など),コレラ,レプトスピラ症,腸チフス,A型肝炎ウイルス(HAV),2.媒介性疾患:マラリア,デング熱,3.身体的健康問題:怪我,筋肉痛があげられる。長期的な健康被害としては,1.メンタルヘルスの問題:苦痛,メンタルヘルス,心的外傷後ストレス障害(PTSD),うつ病,不安,認知の歪み,睡眠の質の低下,2.栄養失調があげられる。 洪水に対して脆弱なグループとして,女性の方が男性より概して健康被害が多いことがあげられたが,胃腸疾患や皮膚疾患など仕事での暴露により男性がかかりやすい疾患も報告された。また,5歳未満の小児や高齢者は脆弱なグループとして報告された。 著者は,SDGs指標の枠組みでは,水系感染症や精神的な危険因子については,具体性に言及していないと批判している。また,SDGの保健・災害関連目標においては,複雑な問題や多因子疾患を単純化しすぎているため,防災計画に有益な詳細な情報が見落とされていることを指摘している。そして,SDGsの枠組みに仙台防災枠組を組み込むことを提案している。 また,著者は,洪水は直接的な被害を多く引き起こす高強度の事象であるのに対し,干ばつは長期的かつ影響があまり明確ではないが人間や動物を広範囲に死なせている災害であると指摘し,干ばつに関する研究の必要性を提起している。 この研究は,既存の国際的なデータと文献レビューを統合することで,洪水や干ばつの影響を広い視野で捉えたものとして,多くの知見を提供してくれる。