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No. 1 (被引用数:264)

 

Abstract

Poor people are disproportionally affected by natural hazards and disasters. This paper provides a review of the multiple factors that explain why this is the case. It explores the role of exposure (often, but not always, poor people are more likely to be affected by hazards), vulnerability (when they are affected, poor people tend to lose a larger fraction of their wealth), and socio-economic resilience (poor people have a lower ability to cope with and recover from disaster impacts). Finally, the paper highlights the vicious circle between poverty and disaster losses: poverty is a major driver of people’s vulnerability to natural disasters, which in turn increase poverty in a measurable and significant way. The main policy implication is that poverty reduction can be considered as disaster risk management, and disaster risk management can be considered as poverty reduction.

Keywords Poverty. Disasters . Risk . Climate change

抄録

貧しい人々は,自然災害や災害の影響を不釣り合いに受けている。このホワイトペーパーでは,なぜこのようなことが起こるのかを説明する複数の要因について概説する。それは,曝露(常にではないが,多くの場合,貧しい人々は危険の影響を受ける可能性が高くなる),脆弱性(危険にさらされると,貧しい人々は富の大部分を失う傾向がある),および社会経済的レジリエンス(貧しい人々は災害の影響に対処し,そこから回復する能力が低い)の役割を検討する。最後に,この論文は,貧困と災害による損失との間の悪循環を強調している。貧困は人々が自然災害に対して脆弱になる主な要因であり,その結果,測定可能かつ大幅に貧困が増加する。主な政策の含意は,貧困削減は災害リスク管理として考えることができ,災害リスク管理は貧困削減として考えることができるということである。

キーワード: 貧困; 災害; リスク; 気候変動

コメント

 この研究は,最近の世界銀行の報告書(Hallegatte et al. 2016c, b, c, 2018)に基づき,貧困層が災害に対してより脆弱な状態にある主な要因を説明している。すなわち,1.貧しい人々がより自然災害にさらされることが多いという証拠を示し,2.貧しい人々は常に災害に対してより脆弱であること示し,3.社会経済的レジリエンスの概念と,貧困層が自然災害に対応し,立ち直る能力が低い要因を紹介し,4.自然災害によって人々が貧困に陥る悪循環を描いている。

  1. 曝露バイアス:貧しい人々は自然災害の影響を受けやすいか? という問いに対して,貧しい人はリスクの高い土地へ追いやられる可能性が高いこと,防災のためのインフラが不足しているため,より影響を受けやすいことを文献をもとに論じている。
  2. 脆弱性バイアス: 貧しい人々は災害に見舞われたときにより多くのものを失うか? という問いに対して,資産の脆弱性,第一次産業(農業等)への生計の依存(自然への依存),自然災害による食料安全保障への影響に対してより脆弱などにより,災害は貧しい人々により大きな影響をもたらすことを示している。
  3. 社会経済的レジリエンス:貧しい人々は災害に対処し,災害から回復する能力が低いか? という問いに対して,貧しい人々は資源が乏しいため,災害から回復するのにより多くの苦労を強いられ,また,貧しい人々は,より孤独になる傾向があり,金融商品,社会的保護制度,個人送金からの支援は,より少ないことを示している。その結果,低所得者ほど自然災害からの復興が困難であるというエビデンスがあることが述べられている。
  4. 悪循環:なぜ自然災害は人々を貧困に陥れるのか? という問いに対し,著者は,調査によると,自然災害は家計の貧困化の一因となっており,多くの研究では災害(洪水,ハリケーン,嵐)の後,貧困が増加する傾向があることを実証されている。

 これらの文献レビューを通して,著者は,災害リスク管理が貧困削減と見なすことができ,貧困削減が災害リスク管理と見なすことができ,貧困削減と災害へのレジリエンスを構築することがもたらす社会的利益を示していると主張している。災害時は弱者のリスクが注目されるが,本研究は,貧困に焦点をあて,グローバルな視野に立ち具体的にどのような脆弱性をもつのか経済的側面から浮き彫りにしている点で優れたレビューであると考えられる。

Hallegatte S, Bangalore M, Jouanjean MA (2016c) Higher losses and slower development in the absence of disaster risk management investments. Policy research working paper 7632. World Bank, Washington, DC